【校長挨拶】令和 7 年度前期終業式挨拶「AIの時代」2025.8.7
令和7年8月7日
学生・保護者の皆様
校長 田村 隆弘
令和 7 年度前期終業式挨拶「AIの時代」(校長挨拶)
皆さん、こんにちは。校長の田村です。
前期末試験、お疲れ様でした。
そして、高専体育大会も高校野球もお疲れ様、吹奏楽の県のコンクール金賞受賞も、よく頑張りました。高専大会に関しては、今年は昨年の2倍の個人24名、リレーや団体も最近3年で最も多い6団体が、全国大会へ進みます。選手の皆さんには、体調管理に気をつけて、ぜひチームにとっても自分自身にとっても最高の結果が出るように頑張ってください。
体育大会以外にも夏休みは、さまざまなイベントやチャレンジする計画もあると思いますが、どうか事故やトラブルに気をつけて有意義な時間を過ごしてください。
さて、先月NHKで「AIは人間を超えるのか?『知能と何か』驚きの発見」という番組をやっていました。見られた方もおられるかと思いますが、タモリさんとiPS細胞でノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥先生が進行役を務められていました。
今まさにAIの時代が到来しています。既に皆さんもChatGPTなどを使っておられるかと思いますが、番組では「知能とは何か」という視点から、最先端の技術を紹介していました。
番組の中で私が特に印象的だったのは、AIを搭載した4足ロボットの開発シーンですが、最初全く歩くということを知らないロボットが、まるで赤ん坊が学習して立ち上がって歩き始めるように、仰向けからうつ伏せに、そして、ハイハイから4足歩行し始めます。さらに、歩いている状態から突き飛ばされてひっくり返っても、すぐさま立ち上がるように学習していきます。
まるで、赤ん坊の身体性の成長に関わる知能がロボットで再現されているような感覚になりました。
番組では、ゲストに東京大学AI研究室の松尾豊先生や、慶應義塾大の栗原聡先生、そして東大ロボット研の国吉康夫先生も出ておられました。
松尾豊先生は、私も以前高専のイベントでお話しする機会がありましたが、先生の研究室にも多くの高専からの編入学生が所属していて、高専にとても理解のある先生です。彼は「知能の本質は予測能力。予測能力が高いほど生存確率が高いんです。」と語っていました。
また、栗原さんは「知能とは、言葉」と言われました。対話型AIの創造性や、大規模言語モデルを研究開発しておられる方らしい定義です。「人間は、予測を繰り返しトレーニングすることで創造性が育つが、AIも同様」と語られました。皆さんが日々勉強やクラブ活動などで、繰り返し学習したり練習したりすることは、予測する力を身につけること、予測し反応する力を身につけることに繋がっていると考えることが出来ます。
そして、東大ロボット研の国吉先生は、「(body shapes brain)知能とは、身体性であり、生命進化の結晶」と話されました。
こうした知能について先端研究しておられる方々の話を聞くと、知能とはある種のシステムであり、また、システムであれば近未来に極めて人間に近い知能を作り出すことが出来そうな気もしてきます。皆さんの中にも、今後そうした研究開発に関わる人が出てくるのではないでしょうか。
一方で一般ユーザーは、AIを活用して生活することになります。
AI使いの達人と言われているインタラクションデザイナーの深津貴之さんは、「AIはクッキングです、素材を集めて料理をするようなものです。」、そして、「AIは次の言葉を予測しているだけ。予測するためには、その前の情報が大切。」と言われていました。
さて、AIをいかに使いこなすか。これは、技術開発と同じで、平和利用を目的として開発しても、使い方次第で戦争の道具になってしまいます。
また、人間が便利で楽に暮らす環境を作ることの弊害として、例えば、車社会になって足腰が弱くなってしまうように、『AIに頼ることで衰えてしまう能力が出てくる可能性』についても心配する必要があります。要は、『AIを適切に活用することを考える高度な思考力と倫理観を持った人材が求められる時代』ということでしょう。
また、番組では、「ChatGPTは、体験が無い状態で言葉を組み立てることから、『言語的な世界に閉じているので』人の知能とは全く異なる。」とも話されていました。
これからの夏休み、ぜひ、様々な体験を重ねることで、ChatGPTでは決して答えを出せない皆さんの体験に基づく「世界中で自分にしかない唯一無二の知能」を一層進化させてください。
では、皆さん全員が充実した夏休みを送って頂くことをお願いして、本年度前期、終業の挨拶とします。