都城高専 物質工学科
野口太郎研究室

研究内容

アクチンは一つのポリペプチドであるG-actinとそれが螺旋状に重合したF-actinの状態で存在します。アクチンは真核細胞に普遍的に存在し、細胞運動や細胞分裂、筋収縮など様々な生理現象で中心的役割を担っています。一方アクチンは様々な分子構造状態をとることが知られ、この構造多型はアクチンや結合蛋白質の機能に重要な働きをしていると考えられています。例えば、アクチン脱重合蛋白質であるコフィリンはアクチンのピッチ長を短くしますが (McGough et al., 1997)、この構造変化は脱重合活性との関連が指摘されてています (Galkin et al., 1997)。また、ミオシンとの相互作用によってもアクチンは構造変化し、架橋試薬を用いてこれを抑制すると運動能が阻害されます(Prochniewicz et al., 1993)。さらに、これらアクチン構造多型はミオシンやコフィリン等のアクチン結合蛋白質との親和性に影響することが示唆されていることから (e.g. Tokuraku et al., 2009)、結合蛋白質の局在決定機構への関与が示唆されています。つまり、アクチンの構造多型は、細胞内でアクチンフィラメントの機能分化に寄与していると想像されますが、その詳細についてはわかっていません。
 私たちは、変異アクチンやFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)の技術を用いて細胞内外を含め様々な条件下におけるアクチンの構造状態の検出と機能との関係性を調べることでアクチン構造多型性の生理的意義を理解することを目指しています。

 パーキンソン病に代表されるαシヌクレイノパチー患者の脳内にはαシヌクレインと呼ばれる比較的低分子(140アミノ酸残基)のタンパク質の凝集体を主成分としたレビー小体が確認されます。このαシヌクレインは健常な脳内にも存在していますが、その凝集メカニズムやαシヌクレイン自体の機能については未だ不明な点が多く残っています。そこで我々はαシヌクレインの凝集過程を可視化できる細胞の開発と、αシヌクレインの機能解明について研究を行なっています。

 植物寄生性線虫はサツマイモやレンコンに寄生し深刻な損害をもたらすが、従来型の防除方法(土壌燻錠剤や粒剤殺虫剤による消毒)はコスト面、環境、ヒトへの健康面への影響が懸念されており、新たな防除方法が求められています。一方、近年、土壌改良資材により土壌中のバチルスが優先化すると寄生性線虫による被害が抑制されることが明らかにされています。我々はこの抑制メカニズムを解明することで新奇生物防除システムの構築を目指して研究を進めています。この研究は産業技術総合研究所 生命工学領域生物プロセス研究部門 微生物生態工学研究グループの黒田恭平研究員との共同研究として行なっています。