物質工学科は物質工学棟,生物工学棟,ミニプラント室からなり,それぞれの部屋に主に以下の機器類が設置してあります.それらの機器類は学生実験,卒業研究,教官研究に広く使われています.
原子吸光分光光度計 原子吸光分析は,光が原子蒸気の層を透過するとき基底状態にある原子が励起され,そのためにおこる吸収の強さを利用して定量分析を行うとき用いられる.アルカリ金属,アルカリ土類金属,亜鉛,カドミウム,銅,銀などの金属イオンの微量分析に適しています.
本装置は日本ジャーレルアッシュ製の原子吸光/炎光共用分光分析装置 AA-855 型を導入しています.
高速液体クロマトグラフ カラム充填剤,液送系,検出器などの進歩発展により,従来の液体クロマトグラフにくらべ高速液体クロマトグラフは迅速,高分離機能かつ高感度なものとなりました.現在,その分離機能,迅速性,定量性はガスクロマトグラフ法に匹敵し,生化学的試料,環境試料をはじめ広い範囲の分析に適用されています.
赤外分光光度計 赤外線吸収スペクトルによって(1)標品あるいは既に測定されたスペクトルデータの比較により化合物の同定ができる(2)分子中の多重結合や官能基の有無により構造の特長がわかる(3)純度の検定や混合物の成分比の測定が可能である,などの特徴をもっています.本校には通高分解能で波数精度・再現性が極めて高いフーリエ変換赤外分光光度計が設置してあります.
質量分析装置(MS) 得られたマススペクトルによって(1)正確な分子量(1の位まで)がわかる(2)標品あるいは既に測定されたスペクトルデータの比較により化合物の同定ができる(3)分子の開裂様式より未知物質の分子構造が推定できる(4)分子中のCl,Brなどの原子数がわかる,などの特徴をもっています.
ガスクロマトグラフ装置 得られたガスクロマトグラムによって(1)標品と目的物質の保持時間の比較により化合物の同定ができる(2)混合物中に含まれる成分の数がわかる(3)定量分析ができる,などの特徴をもっています.
本校には検出器に熱伝導度型検出器(TCD)および水素炎イオン化検出器(FID)をもつガスクロマトグラフが設置してあります.
紫外可視分光光度計 試料溶液あるいはそれに適当な発色試薬を加えて,その吸光度を測定することにより試料の定性・定量を行ったり,試料の構造を調べたりする機器です.使用される光の波長領域は可視光(350〜800nm),紫外光(200〜約350nm)です.
本科は島津製作所製UV-2400PC,UV-1600の2機種を備え,第4学年の実験,卒業研究,教官研究に広く利用されています.
X線回折装置 理学電気(株)のRAD-B形で,管球はCuを使用.付属品として試料高温装置を有し,標準ソウトウェアと応用ソウトウェアとして定性分析,定量分析,Kα1とKα2の分離,格子定数の精密測定,結晶サイズ/格子歪測定などをもっています.
高温型示差熱・熱重量同時測定装置 本装置では粉体試料を使用して,触媒物質の耐熱性や,加熱に伴う化学変化を知ることができます.また,多孔質ガラスまたはガラスセラミックスを製造する際において,原料ガラスの分相温度と結晶化温度,ガラス転移点,融点などを決定するために有効に利用されます.さらに,製造した材料の加熱特性,結晶化温度等を測定し,機能を発揮させるための最適な熱処理条件を知るためにも使用されます.
キャピラリー電気泳導装置 シリカ製の中空キャピラリー内に緩衝液(buffer)を満たし,キャピラリーの片端に,極微量の試料を加えてから、両端に電圧(−30〜+30kV)を掛け,電気泳動をおこないます.移動速度は試料成分毎に,荷電・大きさ・形といった特性の違いにより多くの場合に差異があります。このためにカチオン,アニオン,有機酸,ビタミン,ペプチドなどの多様な試料成分を分離することができます.
発光分光分析装置(ICP) 発光分光分析装置は発光光源において,エネルギーをえて励起状態になった原子が元の状態に戻るときに,元素固有のスペクトル線を放射します.
このスペクトル線を分光器で分散させた後,検出器でこれらのスペクトル線の強度を測定することによって,定性分析や定量分析を行う装置です.
イオンクロマトグラフ イオンクロマトグラフは,水溶液中の各種イオンを測定対象として,試料を直接あるいは必要に応じて簡単なろ過,希釈,濃縮を行い試料注入するだけでイオンの分離分析を行うことができる装置です.たとえば,工業用水中の塩素イオンや硫酸イオンなどを簡単にかつ速やかに分析することができます.
蛍光X線分析装置 局所分析機能、マッピング機能を実現した波長分散形蛍光X線分析装置です.最小分析径500μm(*),30mm円内の位置を任意に設定可能で,複合試料の部分ごとの情報を得ることができます.最高速300°/ minのスキャンにより,わずか3分の間に,Be〜Uの定性・定量分析を行います.
小型走査型電子顕微鏡(SEM) 15倍から10万倍の幅広い観察倍率で物質の表面状態を観察できます.様々な対象物で蒸着なしかつエネルギーの低い電子ビームで観察することができるため対象物内部の組成や材質の影響を受けることなく,表面の形状を正確に表現した観察象が獲られます.また対象物に与える電子ビームのエネルギーが低いため,対象物に与えるダメージや変形も最小限に押さえることが可能です.